Nobue Kanekawa’s page
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富士フイルムフォトサロンで開催させて頂いた、初写真個展「根っこ」に、ご来場くださった皆さま、応援してくださった皆さま、有り難うございました。六本木の立派なギャラリーで写真展を開催するなど、到底1人で出来る事ではありません。若手写真家応援プロジェクト【写真家たちの新しい物語】に選んで頂き、全面的なサポートを得て開催の運びとなりました。6月3日〜16日の2週間の会期に、本当に大勢のお客様に御覧頂き、お陰様で無事終了致しました。感謝の気持ちでいっぱいです。 写真展会期終了からしばらくし、異次元にいたような不思議な時間を振り返ってみたりしています。会期中の2週間で、フジフイルムスクエア全体のご来場者数は、18,691人だったそうです。1日平均1,335人。全員が必ず私の展示スペースに来てくださるわけではありませんが、多くの方が全ての展示を見てくださったのではないかと思われます。
初日からまず感じたのは、東京ミッドタウンの中にあるギャラリーという立地から、写真に詳しい方はもちろんのこと、お買い物や、お仕事の合間や帰りに気軽に立ち寄ってくださる方もあり、美術館帰りや、旅行者、近隣にお住まいの方など、鑑賞の仕方、受け止め方も様々で、お客様との会話も本当に多様で、興味深く、楽しかったことです。
写真と出会った音楽家として、プロフィール写真はクラリネットを持った物を使用しました。そんなこともあり、遊び心で、写真個展の会場でお配する冊子は、以前のリサイタルプログラムのデザインを踏襲して製作してみました。
再会。黒猫が一匹おります。ちょっと拗ねたように横を向いていますが、大人にも、子供にも、人気です。
見つめる彼女。クラリネット教室の生徒であった、お母さんのお腹の中で、私のコンサートを聴いてくれた事があります。会いに来てくれてありがとう。
折り返しの日。2週間の会期を頂きました。私の展示はスペース2です。隣のスペース1では、昨日まで前田博史さんの室戸の海の写真で満たされていましたが、今日からは日本写真会の展示です。私のいるスペース2でも隣の気配を感じます。昨日夕方、あっという間に進められていく展示替え作業の様子を感じながら、少し切なくなりました。2週間長いようでうすが、来週の今頃は私の写真も、そうしてあっという間に片付けられるのだなぁ。昨年の春から撮り始め、一年以上、繰り返しPCで眺め、プリントしては並べ替え、試行錯誤しながら見続けた写真ですが、大きなこのサイズで、こんな風に広く並べて眺めるのは、この1週間だけのことでしょう。多くの方に見て頂きたいのはもちろんですが、自分でもこの感じをしっかり眺めて心に刻んでおこうと思います。
個性的な展示会場です。スペース2 外側の壁にも展示が続いていました。
夜、外から見るとこんな感じです。
始まりはここから
「根っこ」は、この赤い花の写真から始まりました。
昨年の春、思い切って参加したのは、ステートメント(文章)をつけて作品をまとめる講座、日本写真学院の鶴巻ゼミでした。素敵な写真を撮る女性の写真家 鶴巻育子さんの講座です。その時の参加者の気持ちも重なって、女子っぽいゆるいものではけしてなく、毎回熱い、濃い内容の講座でした。課題としてのテーマは地元を撮る。台東区に住む私は、浅草から広がる下町を撮るのだということを思いながら、始めテーマはまだはっきりと定まっていませんでした。たくさん撮って持参しても、その場所で撮った必然のないものは、どんどん削られていきます。例えば花の写真など。そんな中、残されたのがこの花の写真でした。花や光が美しいと思い撮りながら、ふと私の思いが重なったのを感じてくださったのかもしれません。引き出されたのは、父の仕事場があった 台東区 柳橋 で、街の人達と触れ合い過ごした時間。自分と向き合い、大切なものを確かめながら出来ていった作品です。
今回公募に通ったのは、この時制作した、ステートメント+写真30点でまとめた作品です。
さてそこから、
富士フイルム担当者からの、うちの会場結構広いです、作品点数増やしましょう。とのお言葉!
会場レイアウトも考慮しつつ試行錯誤の日々!まだこの壁に後2点入りますと言われたのは、もう開催まじかだったような。出来上がってみると仰る通り、バランスが取れていい雰囲気になりました。一緒により良く考えてくださってありがとうございます。結果、1.8倍。ステートメント+写真56点で1つの作品となり展示されています。 ふぅ。
今も昔も、私はとても良い出会いに恵まれて、幸せだと思います。
受付に座って右手の壁を眺めると、ちょうど子供の頃の目線の高さで、父の足を眺めているようです。柳橋の繊維問屋街で、父は私が生まれた頃にレース問屋を起業しました。レースの染色がもともとの専門です。母が事務を手伝っていました。当時は仕事場の一角にベビーベッドを置いて、私も両親と一緒に出勤して過ごしていたようです。一時期は少し大きくした会社も、時代の流れと、娘は継ぐ気はないし、年もとり、小さくしてまた一人で仕事をしていましたが、建物の耐震補強工事で移転の勧めがあった事をきっかけに、昨年末に仕事場を閉めました。本人も周りも、引退するものだと思っていました。ありがたいことに、お得意先の布地屋さんが染色部を立ち上げたいとのことで、大鍋やコンロなどの道具を引き取ってくださることになり、いつの間にか父も引き取られ、春から染色部の立ち上げをお手伝いさせていただき働いているようです。72歳、43年ぶりによその会社にお世話になっています! 普段温厚に見えますが、九州男児、なかなかやるなぁ。^^ 技術を持っているってすごいのですね。レースだけでなく、布地、ボタンなども染めるよう。染色のご用命は、フジカケ染色部へお問い合わせください。
今回は、作品にステートメントと呼ばれる文章を添えました。この文章も作品の一部だと考えています。その中の一部、「缶に入った琥珀色の飴」という言葉、実はすご〜く悩んで考えたものです。よく貰ったこの飴は、ご存知の方もいるでしょうか、 榮太樓の「梅ぼ志飴」です。赤い缶を開けると、三角の飴がコロコロと入っています。梅干しは入っていません。優しい甘さで美味しいのです。本来の名称ではイメージが伝わらないので、考えた末に一番しっくりきたのが「缶に入った琥珀色の飴」でした。 榮太樓のサイトにも、面白いエピソードが載っています。よろしければ覗いてみてください。
同じく東京ミッドタウン内にあるサントリー美術館では、会期がかさなる日程で、広重の展示がありました。そちらの会場では、こんな浮世絵の絵柄の梅ぼ志飴も売っていたそうです。
東京ミッドタウンのサイト、トップページでも紹介されていたようです! 会期終盤になり、友達に教えてもらって気がつく、のんきな私。
週明けの月曜日、その日は、ワントーン落ち着いた雰囲気で始まりました。
「雨の日に、もう一度見てみたかったんです。」といって再訪してくださったお客様がいました。
「何気ないものが写っていたりするのだけど、なんだか良いですね。落ち着きます。」
ありがたいことです。
今回、富士フイルムフォトサロンの企画として展示させて頂いています。その他に、2つの企業に後援して頂きました。
1つは、浅草 雷門で江戸時代から続く、藍熊染料株式會社です。父の仕事場にいつもあったレースを染める染料の缶。熊のロゴが、子供だった私のお気に入りでした。1818年創業だそう。
もう1つは、私が長年愛用しているクラリネットを扱う、管楽器メーカー、株式会社 ビュッフェ・クランポン・ジャパンです。フランスで始まり、創業190年を迎えたそうです。
https://www.facebook.com/buffetcramponjapan
こちらにも古今東西が揃い、写真展のテーマと繋がったようです。ありがとうございます。
いよいよ最終日。フジフイルムスクエア「根っこ」が展示されている スペース2、受付の向こうに赤く見えるのは、アスタリフトの売り場です。フイルムのナノテクノロジーを応用し開発した化粧品だそう。同じくフジフイルムスクエアの中には、写真歴史博物館もあります。以前、見どころガイドに参加したことがありますが、その際に、時代毎に革新的なことに挑戦してきたお話もありました。富士フイルムは、守りと革新、バランスの良い会社なのでしょうね。広い視点を持った富士フイルムフォトサロンの皆さんが選ぶ、その先の新しい物語も、どんな展開が続くのか、とても楽しみです。
多くの方に私の写真を見て頂けたのは幸せなことです。それ以上に素晴らしかったのは、写真を眺め、佇んだりしながら、それぞれに思いを巡らせてくださっているのかもしれない、お客様の様子をずっと感じていられたことかもしれません。写真を切っ掛けに湧いてきた、ご自身の思い出を語ってくださる方も多かった。本当に多くの方と接し、お話しさせて頂いた、貴重な機会でした。
これからも、音楽と写真を通じて、想像を広げ、豊かな時間を共有できる活動を継続していきたいと思っております。有り難うございました。精進してまいります。
次回の写真展示:
2016年7月8日金曜日〜18日月曜祝日 「Regard Intense by 16 photographers 」
音楽プロジェクトc.d.f(セーデーエフ)仲間の活動:
2016年10月25日火曜日 トロンボーンカルテット「ル・グラン・ブルー」第8回レギュラーコンサート
2016年6月30日木曜日
根っこ