Nobue Kanekawa’s page
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子供の頃、旅番組をよく見ていました。世界中の自然や文化や美味しいもの、様々な人や暮らしを、東京の小さな家の、冬にはこたつになる座卓の傍らで、ずっと見ているのが好きでした。思春期の頃には、オリーブやアンアンなどのファッション雑誌で、海外特集の記事がたくさんあって、行ったことのないパリやロンドンやミラノが、身近な存在のようなきになったりしていました。レストランにパンやお菓子、この街では色々な国の味からもイメージが広がります。
写真のお菓子は、音楽の都ウィーンの味。ウィーン王宮御用達菓子司デメルの生クッキーです。クッキーと言うよりも小さなケーキ、フランス菓子のプチフールや、和菓子のような感じです。有名なザッハトルテよりも、クッキー類の方が甘すぎなくて私は好きです。それでも、その濃厚な味わいや、ナッツやスパイスの香りは特徴的。その昔、王宮で、ご馳走や甘いお菓子を、時間をかけて味わいながらおしゃべりしている様子や、衣装や装飾を思い浮かべ、そういう空間の為に作られたクラシック音楽もたくさんある事を、一瞬まじめに考てみたり。それはともかく、やっぱりチョコレートの部分が美味しいですね。(生クッキーの入荷は週に2日のみ、賞味期限も短めです。予約をして買いに行った方がよさそうです。)
このお菓子を、初めてある女性から頂いた時、とても嬉しかった。私が喜びそうな物は何だろう?と、きっと考えていてくれたに違いない事が伝わってきたから。私がした他愛もない事のお礼に、大げさすぎてかえって気を遣わせないようにと、大きな花束ではなく、ココット皿に入った小さなフラワーアレンジを下さったりするような方です。ところが、この宝石箱のような特別なお菓子を、どんな機会に頂いたのかは忘れてしまいました。でもはっきり記憶に残っているのは、箱を開けると、綺麗で可愛らしいお菓子がぎっしり詰まっていて、ふわっと気持ちが浮かび上がって嬉しくなったこと。そんな出来事を思い出しながら、予約を入れて、お店にお菓子を受け取りに行くのは楽しいものです。優しさや、嬉しい気持ちが、別の誰かにつながっていくような気がするから。
平成23年2月1日火曜日
お菓子の宝石箱